呑んだ、売った、貼った。何も届かないサブスクが教えてくれたこと。

「呑んだ、売った、貼った」

人生でいろんなことに手を出してきた。

イベントでお酒を売ったり、エステ商材を取り扱ったり、貼る系の美容アイテムを広めてみたり。

一つのことを極めるというより、「これ面白そう」と思ったらやってみる。

それが、私の生き方だった。

だけど、どこかでいつも、“在庫”と“信用”という名の重さを感じてた。

何かを仕入れれば売らなきゃいけない。

売れなきゃ不良在庫。

それでも仕入れ値は払ってる。

広告も、自分の言葉も、信頼もかけて売ってる。

それが当たり前のビジネスの形だと思っていた。

だけど、ある日ふと、こんなことを思った。

「在庫を持たずに、何も届けずに、でも人に価値を届けることってできるのか?」

「え、それもうビジネスじゃないやん」

そう笑う人もいるかもしれない。

でも私は、それこそが次の時代の“商売のカタチ”なんじゃないかと思った。

「サブスク」という仕組みがくれた自由

最近、自分の周りでも「サブスク」って言葉をよく聞くようになった。

動画見放題、音楽聴き放題、毎月コーヒーが届く、スキンケアの定期便…。

けど、私が始めたのは**「何も届かない」サブスク**だった。

商品はない。

パッケージもない。

箱もない。

あるのは、“意識が変わる時間”だけ。

そう、私が売るのは、

**「気づき」と「習慣」と「変化」**だった。

たとえば、美容サロンで

「毎月一回肌に向き合う時間」

「自分を整えるスイッチ」

それ自体を“定期的に訪れる安心”として提供していく。

あるいは、オンラインで

「日々の気持ちをリセットする言葉」

「未来の自分を想像するトレーニング」

そんなコンテンツを、まるで空気みたいに、自然と届けていく。

何かが“届く”わけじゃないけど、

でも「ちゃんと届いてる」と感じてもらえる。

そんなサブスクをつくりたかった。

届かない=忘れてる。でもそれでいい。

面白いのは、**「何も届かない」って、人はすぐに“忘れる”**こと。

「登録してたの忘れてた」

「でも、毎月なんか気持ちが整うのよね」

そんな声を聞くたびに、「ああ、それでいいんだ」って思う。

届けることに全力だった自分。

箱のデザイン、配送ミス、梱包材…。

“形あるもの”を売るって、ものすごく労力がいる。

でも、“形がないもの”って、逆にすごく自由なんだ。

言葉も、習慣も、行動も。

その人の“中”に届いたら、それが一番強い。

商品は忘れられても、気持ちは残る。

それが「本当に価値あるサブスク」なんじゃないかって思ってる。

在庫を抱えないって、実は“心の在庫”も減らせるってこと

このサブスクを始めてから、びっくりするほど気持ちが軽い。

「売らなきゃ」というプレッシャーがない。

「残ったらどうしよう」とか「在庫をどう回すか」もない。

なんなら、キャンセルが出ても凹まない。

だって、届けるものが「言葉」だから。

時間さえあれば、また新しい価値をつくれるから。

昔は、モノを扱うとき

「これ、あと3個在庫あるから誰か買ってくれないかな…」って焦ってた。

それって、心にも“在庫”を抱えてたってことなんだ。

心の中に「売れ残り」があると、人って不安になる。

でも今は、「必要な人に、必要なときだけ届けばいい」と思えてる。

「商売=形あるもの」じゃない時代が来た

これからの時代、

モノより“コト”が売れる。

情報より“解釈”が求められる。

スペックより“体験”が大事になる。

つまり、“目に見えない価値”に人はお金を払うようになる。

それって、すごく面白いことだと思う。

私たちは、もう「モノを持ってること」が豊かさじゃないと知ってる。

それより、「自分が何を感じてるか」「どんな日常を過ごしてるか」が幸せの基準になってきてる。

だから、「何も届かないけど、心に残るサブスク」は、

むしろこれからの時代のど真ん中を行く存在なんじゃないかって、私は思ってる。

“貼った”“売った”“呑んだ”日々が、無駄だったわけじゃない

もちろん、モノを売ってた頃の経験も、全部大事だった。

売れたときの喜び、在庫を抱えたときの焦り、

パッケージをどう魅せるか、どう伝えるか、

どれも、今の私の「見えない価値づくり」の基盤になってる。

“貼った”日々も、“売った”日々も、“呑んだ”日々も、

全部、今の“届けないサブスク”につながってる。

だからこそ言える。

「何も届かなくても、人は満たされる」って。

最後に:このビジネスは、まるで“空気清浄機”みたいだと思う

ある人に、私の事業のことを話したら、こう言われた。

「それってさ、空気清浄機みたいだね」って。

最初は意味が分からなかったけど、

「意識しないけど、なくなったら気づく。空気を整えてくれてるって」

その言葉に、すごくしっくりきた。

私が届けたいのは、「目立つ刺激」じゃなくて

“気づいたら整ってた”みたいな体験。

だから、届かなくていい。

忘れててもいい。

でも、続けたくなる。

そんな“やさしい事業”を、私はこれからもつくっていきたい。

呑んだ、売った、貼った。

その先に見つけた、“何も届かないサブスク”。

でも、何より心に届く“事業”になってきた。